すい臓がん治療体験記①

大人を背負っているような強い圧を感じる

 すい臓がんによる死亡者は、年間約3万人を超えるなど、近年、国内でも増加傾向にあるが、すい臓の位置や構造上、あらゆるがんの中でも発見・治療が難しいとされている。

 千葉県在住で、東京・築地にある寿司店「鮨江戸時代」店主を務める宮下幸大さん(55)は、昨年10月にすい臓がんを宣告された。しかし、宮下さんは、がんを克服するために懸命に努力し、闘病を乗り越えて、いまも元気に生活をしている。がん闘病の体験談について宮下さん自身が語ってくれた。

「昨年9月に実父がなくなって、それですぐに葬儀を行ない、その後も実家の片付けなど、何かと慌ただしい毎日が続いていたんです。だから、最初は、ちょっと疲れがたまっているのかなと思っていました。でも、次第に、これはただの疲労ではないのでは? と自覚するようになったんです。

 10月中ばになると、ズキズキした痛みというよりは、大人の男性を背負っているような、背中に強い圧がかかっているような状態が続くようになり、夜の営業を終えたあと、しばらくの間、店内の片隅に座って体を休めないと帰宅することさえもできない。また、これまで見たことがないようなウイスキーのような褐色の小便も出るようになったんです」

酒を飲まないのに肝臓の数値が軒並み異常値に…

 こうした自身の体に起こる異変について心配した宮下さんは、すぐに店の近くにある消化器内科を受診し、血液検査を行なったという。

「受診してくれた先生からは『血液検査の結果について説明しますから、2、3日後、都合のいいときに、また来てください』と言われたのですが、翌日に病院から『すぐに来てください』と連絡があったのです。わたしは、酒は一切飲まないのですが、ガンマGTPなどの肝臓の数値がありえないほどの異常値になっていて、『うちではどうすることもできないので、すぐに大きな病院で診てもらってください』と」

 そこで、すぐに宮下さんは、毎年、定期検診を受けている自宅近くにある「行徳総合病院」を受診した。造影剤を入れてCTを撮ったところ、すい臓に腫瘍が見つかったのだ。

「ところが、担当医からは『当院では腫瘍を取り除くことができないので、専門の病院に行ってください』と、国立がん研究センター中央病院(以下、がんセンター)を紹介されました。そこで、早速がんセンターで検査をしたところ、わたしの場合、すい頭部(すい臓の先端部)、十二指腸と結合しているところに腫瘍があったのです。そこには胆管(胆汁を十二指腸に輸送する管)もあります。そのため、すい頭部にできた腫瘍が胆管を圧迫していて、それにより肝臓に負担がかかり、背中の圧迫感、また肝臓の働きが悪くなり異常値になり、黄疸も出ているという説明を受けました。

 すぐに、圧迫を抑えるために胆管にステントを入れる手術を勧められました。11月初旬に入院をして、ステント手術は無事に成功。手術直後は、ステントを入れた部分が化膿したり炎症することがあるようで、少し体のだるさを感じることもありましたが、背中に感じていた強い圧迫感はなくなりましたね」

取材・文/大崎量平


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