名門ゼネコン・戸田建設がひた隠す洋上風力事業破綻の真相

洋上風車に不具合が発見

「洋上風力発電は、アクシデントがあり当面の間、凍結する。社外には、この話はしないように」

 創業142年の名門ゼネコン・戸田建設が2006年3月より開発を進めている長崎県五島沖での「洋上風力発電」について、同社の大谷清介社長は、4月3日に行われた今年度の経営方針説明会において社員に対して、このように伝えたという。

 この大谷社長の発言を裏づけるかのように、同社は今年5月9日、製作中の風車2基に不具合が発見されたため、2023年3月期の連結決算について約95億円の減損損失を計上すると公表した。戸田建設社員が内情を明かす。

「現在までに五島沖に3基が完成し、当初の目論見では、年内中に5基の巨大風車を完成させて、来年1月より全8基による商業運転を開始する予定でした。ところが、今回、五島市の福江港ヤードで製作中だった4基と5基のプロペラ部に重大な欠陥が見つかったため、計画は停止状態に。いまだに不具合の原因について現場検証が続いています」

事業の中心人物がライバル会社に転職

 洋上風力発電事業は、「再エネ海域利用法」に基づく国家的なプロジェクトでもある。所管省庁の経済産業省担当者は、このように指摘する。

「戸田建設からすでに報告は入っています。当初の計画通り、約半年後の来年1月より商業運転を目指すということでしたが、風車の不具合による海での事故はあってはならないので、詳細な調査を行う必要があります。そのため、運転開始の時期は、延期になると見込んでいます。延期になった場合、戸田建設は事業計画の見直しが必要になります」

 こうした中、社内では経営トップ肝入りの事業をめぐり、大混乱が続いているという。しかも、いま社内では商業運転の延期どころか、事業自体の破綻さえも囁かれているというのだ。前出の戸田建設社員が続ける。

「現場レベルでは、当初より洋上風力発電の収益性はまったくの未知数という意見が大多数でしたが、経営陣は見切り発車的にスタートさせた。ところが、昨年秋には、プロジェクトの中心人物だった社員Sがろくに引き継ぎも行わずに事業を放り出すかたちで、ライバルのゼネコンに転職しているんです。事業の破綻が発覚する前に逃げたという噂も出回っています。Sが去って以来、誰が後任をやるのか? こんな負け戦には関わりたくないと、社内ではたらい回しの状態が続き、事業自体が滞り、いま現場は機能不全に陥っています」

経営陣は回答を拒否

 同社は、今回の事業を進めるにあたって、グリーンボンドと呼ばれる債権を発行し、150億円以上の資金を投資家から調達。巨大風車に加えて、風車を海上に運搬・設置するための大型作業船なども建造している。

「莫大なコストを投じているため、引くに引けない状態なんです。6月29日に行われた株主総会においても一部の株主から、洋上風力事業の進捗状況について質問があったが、経営陣から明確な回答はありませんでした。そもそも、事業化に向けて地元住民からは、風車から発生する低周波音による人体への健康被害や騒音、漁業への影響を懸念する声もあった。今後の状況次第では、地元住民から反対の声が再燃するかもしれない」(前出・戸田建設社員)

 戸田建設に対して、「具体的な運転時期や収益性の見込み」について説明を求めたところ、

〈現在のところ2024年1月1日を予定しておりますが、合同会社や国等の関係機関と協議をしているところです。個別事業の採算性について従来から公表はしておりません〉(同社広報部)と回答した。

 すでに五島沖のコバルトブルーの海に浮かぶ3基の巨大風車が〝負の遺産〟になってしまわなければいいのだが……。

取材・文/大崎量平 「週刊現代」2023年6月17日号 掲載記事 初稿

 追記:実は、コロナ禍において、戸田建設は、医療機関などに高性能空気清浄機を販売する新規事業を立ち上げたが、ここでも、社員ひとりに事業を丸投げした結果、事業は破綻し、さらに取引先と契約トラブルに発展。その模様は、写真週刊誌「FLASH」(光文社)2023年3月14日号で報じた。以下の通りである。

「FLASH」2023年3月14日号に記事は掲載

 戸田守道副社長にトラブルの真相について直撃した際の動画を公開する。

質問に対して、終始「自分は関係ない」「病院関係は担当ではない」と主張する戸田守道副社長


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: